アグスティンのレコードジャケットは非常に洗練されたデザインが多いので本人もさぞスタイリッシュな人なのかと思いきや、この日の装いはカジュアルなものだった。茶色とベージュのラガーシャツ。紺色のコットンパンツ。デッキシューズ。
演奏が素晴らしいのはもちろんのこと、印象に残るMCも多かった。「バーデン・パウエルは私の永遠のアイドルである。彼がいなければ私が音楽を始めることはなかっただろう」「ピアソラとはパリで会ったことがあります。お互いアルゼンチン出身なのにそこで会うのは難しくて」「(中島ノブユキとの共演のあとに)偉大なマエストロ、中島ノブユキ。彼もブエノスアイレスに連れて帰りたい」「ヨーロッパに住んでいたとき(1976年)仕事を探すのに苦労していた。だけど、オーディションでこの曲(ビリンバウ)を弾くと必ず仕事がもらえた」そういってはじまるビリンバウのイントロの衝撃。あんなパーカッシブなギターは聴いたことがない。聴いてびっくり観てびっくり。
アンコールでは、アグスティンからリクエストの提案があったが、とっさに誰も声があがらなかった。「あれ、誰も僕のアルバムを聴いてくれていないのだろうか…」という冗談をはさんで、「Hace Pocos Anos!」という声があがる。「けど、今日は女声ボーカルいないし、サックスもいないし…」と渋りながら、例のギターフレーズをちらっと奏でだすと、誰かが、パッパ パーラーーーーとサックスパートを歌いだすではないか。それに応えるアグスティンのギター。ドゥンダン ダダン ドゥンダン ドゥンダン そして会場全体から女声コーラスパート。ラーーーラーーラ ラーラー。ここに集うすべての人のアドリブが最高だ。
3時間ほどの熱演が終わったあと、来日記念としてリイシューされていた Ese dia va a llegar のレコードを買い、サインをもらった。そのさいアグスティンの招聘責任者であり、ライブ中にスペイン語の通訳もされていた西村秀人さんが横にいらしたので、アグスティンと話をすることができた。

「写真の人物はあなた(アグスティン)ですか?と、よく聞かれるんだけど、違うよ」
じゃあ、この裏表紙に写っている少年は?
「これはわたしの息子です」
え?そうなんですか!?
「ブラジルにいったとき、そんなこともあったかなあ」
へえー。そうでしたか。
「冗談だっちゅーの!わっはっは!」
わっはっは&握手。
アグスティンの音楽とおちゃめな人柄にも触れることもできて最高に楽しかった。
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